アガサ・クリスティーの作品なかには、話題に上ったり、映画化されたりし、一度はその作品名を聞いたことがあるな、といった超有名な作品があります。 いずれも今も人気があり、評価も高い作品です。 その作品を詳しく見ていきたいと思います。
『そして誰もいなくなった』1939年
まさに、アガサ・クリスティーの名前も知らない人でも、この作品の題名を聞いたことがある人は、沢山いるのではないでしょうか。 本屋さんでも、お勧めとして置いてあるところが多いです。
あらすじ
UN・オーエンと名乗る男性からの突然の招待状。 兵隊島という孤島に呼び出された10人の老若男女。 招待主が姿を見せぬまま始まった夜の食卓で、どこからか響いてきた不気味な声。 その声はテーブルを囲む一人一人のおぞましい過去と犯罪を暴きだしていく。 動揺する招待客達。 次の日、島から逃れようとするが、何故か毎日やってくるはずの船が来ない。やがて・・・
おすすめポイント
怖いもの見たさの
アガサクリスティの代名詞とも言える超有名作品です。 やはりアガサ・クリスティーを読むなら何をおいてもこの作品ですよね。 ポアロやミス・マープルの出てこないノンシリーズです。
本を手に取るとわかりますが、こんなに有名な作品なのに意外と薄いです。 でも中身は濃い。 次々と起こる殺人事件。 孤島という逃れようもない状況の中で、登場人物たちの過去が次第に暴かれていきます。 精神的にも極限状態へと追い込まれていく。
なんだかこわい作品です。どうなるの、どうなるのと気になって、一気に読めます。 こわいけどさすがに面白い。
アガサ・クリスティーは、1890年9月15日にデヴォン州の、イギリス海峡に面する有名な保養地トーキィのアッシュフィールド荘で生まれています。 『そして誰もいなくなった』の舞台となった島は、やはり、デヴォン州のビックベリー湾に浮かぶバーアイランドです。
このバーアイランドは、ポアロシリーズのなかの大傑作『白昼の悪魔』の舞台としても有名です。
『オリエント急行の殺人』 1934年
『オリエント急行の殺人』は、『そして誰もいなくなった』と同様に本自体も厚くなく、かなりのスピードで物語が進んでいきます。
あらすじ
雪に閉じ込められた、豪華列車オリエント急行で起こった殺人事件。 列車の乗客たちにはみなアリバイがあり、なぞは深まるばかり。 たまたま乗り合わせたポアロがするどい推理で、次々と真相をあばきだしていく。
おすすめポイント
豪華列車オリエント急行の魅力
あまりにも簡単なあらすじですが、詳しい内容を知らないほうが楽しめるのではないかと思います。 この作品も有名なため、いろいろなところで語られ、映像化されています。 『そして誰もいなくなった』と同様に、ネタバレの危険に常にさらされています。 早めに読んでおきたい作品です。
あっという間に読めてしまいます。 次第に真相に近づいていくときのドキドキする感じがたまらないです。
この作品の最大の魅力は何と言っても、豪華列車オリエント急行を舞台としていることでしょう。 もしこれが、普通の寝台車の設定だったら、ここまでロマンティックに感じなかったと思います。
普段の生活からかけ離れた異国情緒あふれる豪華列車の旅、そこに乗り合わせた様々な国籍、階級の人々、食堂車の描写、寝台車の様子など興味深かいです。
『アクロイド殺し』 1926年
あらすじ
イギリスのどこにでもあるようなのどかな村、キングスアボット。 そこで村の名士、ロジャー・アクロイドが殺されるという衝撃の事件が起こる。 その村に、たまたま引退を考えていたポアロが移り住んできていた。 穏やかに暮らそうとするポアロだったが、次第に事件に巻き込まれていく。
おすすめポイント
ロジャー・アクロイドはミステリー史上最も有名な被害者?
またまた簡単過ぎるあらすじですが、もう信じて読んでいただくしかないです。 最初からあまり内容を知らなくても、話はスイスイ入ってきますし、むしろその方が面白く読めます。
アガサ・クリスティを語る上で外せない作品です。
フェアかアンフェアかと議論を引き起こした作品ということを、聞いたことのある方も多いでしょう。 この作品も『そして誰もいなくなった』と同じくあちこちで語られることの多い作品です。 早めに読んでおくことをおすすめします。
面白い作品です。 また、事件の舞台となるのが、他の3冊と違い、のどかな村です。 そこで生活している人々の様子などが描かれていて、他の3冊とは違った味わいがあります。
この『アクロイド殺し』ではポアロは引退して念願のカボチャ作りに精を出します。 なぜカボチャ作りなのかは、短編集『ヘラクレスの冒険』の最初の方に書かれています。 こちらもおもしろい短編集なので興味のある方は読んでみて下さい。
『ナイルに死す』1937年
あらすじ
サイモンとリネット夫妻はハネムーンでエジプトを訪れていた。 幸せなハネムーンとなるはずが、サイモンのかつての恋人ジャックリーンが行く先々に現れて2人を苦しめていた。 旅先で出会ったポアロは、ジャックリーンにそんな行為をやめるよう説得を試みるが・・・ やがてナイル河口上で恐れていた殺人事件が起こってしまう。
おすすめポイント
ナイルクルーズで繰り広げられる壮大なドラマ
ちょっと長い作品で、半分弱読み進めないと事件までたどり着きません。 えーと思われるかもしれませんが心配ご無用です。 読めます。 途中から先を読みたくてたまらなくなります。
舞台は豪華客船、華やかで個性的な人々、異国情緒漂うの雰囲気
ナイルの静かな河の流れが聞こえてくるようです。
どっぷりと浸ってみてください。 アガサクリスティーはこの本の冒頭で、エジプト旅行から帰ってきて直ぐにこの作品を書き上げたと著しています。 オリエント急行と一緒で実際に体験しているからこその、雰囲気がよく伝わってきます。 ナイルクルーズは、当時から、イギリスの上流階級の人々にとって憧れのものだったそうです。
エジプトを舞台に選んだ作品には『死が最後にやってくる』もあります。 ノンシリーズです。 こちらは『ナイルに死す』とは全然違った内容になっています。 紀元前2000年のエジプトを舞台としています。 好みの分かれる作品です。
また、エジプトを舞台として、短編集『ポアロ登場』のなかに「エジプト墳墓の謎」を書いています。 社交界デビューがエジプトだったこともあり、いろいろ興味は尽きなかったでしょう。
まとめ
有名作品4作品どれをとっても、面白い作品です。 どうなっていくんだろう?犯人は誰なんだろう?とページをめくるのがもどかしいくらいです。 時の経つのも忘れて、読んでしまうこともあります。
そんなミステリーを逃避文学とよぶこともあるそうです。
アガサ・クリスティーも『ナイルに死す』の前書きで、ひとときを「南国の日差しとナイルの青い水の国に逃れて」(ハヤカワ文庫参照『ナイルに死す』)と著しています。
確かに、なかなか思うようにならないのが現実です。 つらいことも、不安になることも、孤独を感じることもあると思います。 ひととき、そんなことを忘れて、アガサ・クリスティーの描くミステリーの世界を読みながら旅することは、決して無意味なことではないでしょう。
そのひとときは、私たちの力になってくれるものと思います。
また、年代を見ていただくとわかるとうり、『アクロイド殺し』以外は1930年代の作品です。1930年代、1940年代多作で、傑作も多いと言われています。 年代ごとに作品を読んでみると、またその年代によって作風も変わり、好きな年代あまり好きではない年代と好みも分かれてくると思います。。 そんな読み方、楽しみ方もありそうです。
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