読んでみたいけれど、どこから始めればいいの?
アガサ・クリスティーを読んでみようかな?と思っているかたは多いと思います。 けれど、アガサ・クリスティーの作品は、長編、短編、その他含めて100冊以上。 「どれが面白いの?」「どれから読めばいいの?」と迷ってしまいますよね。
そんなときに知っておきたいのが、アガサ・クリスティー作品の**「読み方のコツ」**です 全作品を読んだクラリサが、シリーズの特徴や、最初の一冊選びのヒントをお伝えします。
また、ミステリーとしてだけではなく、当時の英国の文化、生活スタイルなどを垣間見ることができます。 そこが面白い、魅力的だと感じる人にとっては、病みつきになるかもしれません。 アガサ・クリスティーのファンが増えることは、喜ばしい限りです。
自分の好みの読み方、好きな作品を見つけて欲しいです。
超有名作品4選
まず、よく紹介されているように、有名作品を最初に読むのもいいと思います。 有名なのであちこちで話題となっていて、よく引き合いに出されます。 ネタバレの危険が高いので早めに読んでおきたいです。 評価も高いので、安心して手に取ることができます。
『そして誰もいなくなった』 アガサ・クリスティーの代名詞といえる作品。(ノンシリーズ)
『オリエント急行の殺人』 何度も映画化され、一度は聞いたことがあるかと(ポアロ)
『アクロイド殺し』 ミステリーの書評によく載り、フェアかアンフェアかと問題に(ポアロ)
『ナイルに死す』 映画化され、ナイルクルーズで起こる事件(ポアロ)
上記の本は、書店にもおすすめで分かりやすく置いてあったりします。 特に『そして誰もいなくなった』や『オリエント急行の殺人』はページ数もそれほど多くはないので、久しぶりに本を読む方に向いていると思います。 早い展開にぐいぐいと引き付けられ、あっという間に読み切れてしまいます。
読む順番も上から順に読んでいくのがおすすめです。
ただし、『ナイルに死す』は、登場人物も多く、ページ数もあるので、大丈夫かなと思われた方は別の作品を読んでから挑戦するのもいいと思います。
超有名作品4選 詳しくはこちら 超有名作品4
『スタイルズ荘の怪事件』 1920年
また別の方法として、最初に、デビュー作『スタイルズ荘の怪事件』から読んでみるのもお勧めです。 ページ数も少なく、難しくなく、久しぶりに本を手に取る方にも、読みやすいと思います。
この作品でポアロが初登場し、相棒ヘイスティングズ大尉との出会いも書かれています。 第一次世界大戦当時のイギリス社会、生活スタイルも垣間見られ興味深いです。 ポアロの最後の作品『カーテン』では再びスタイルズ荘が登場しますので、是非読んでおきたい作品です。
この『スタイルズ荘の怪事件』を読んだあと、超有名作品に向かうか、ポアロものを続けて読むか?その選択もあり。 または、他のシリーズものやクラリサおすすめ10選を読んでいくのも良いかと思います。
『スタイルズ荘の怪事件』詳しくはこちら スタイルズ荘の怪事件
クラリサおすすめ10作品プラス
アガサ・クリスティーは、沢山の作品があり、それぞれの趣きも異なっているので、ゆっくりと作品に向き合って頂きたいと思います。 それでも、限られた時間のなかで、面白い作品だけを読みたいという気持ちはよくわかります。 なので、クラリサおすすめ10選を選んでみました。
参考になれば嬉しいです。 今回は長編のみにさせていただきます。 また、超有名作品4選を除きます。 出来れば『スタイルズ荘の怪事件』を読んでおいていただきたいと思います。 またメアリ・ウエストマッコトの作品やポアロ最後の事件『カーテン』は番外編とさせて頂きました。
順位無しで10作品だけ並べてみました。
『ABC殺人事件』ポアロに挑むABCとは (ポアロ)
『白昼の悪魔』日の当たる場所にも悪はあり (ポアロ)
『五匹の子豚』さあ、過去への旅を(ポアロ)
『動く指』ミス・マープルはなかなか登場しないけど (ミス・マープル)
『ポケットにライ麦を』ミス・マープルを憤然と立ち上がらせた事件 (ミス・マープル)
『鏡は横にひび割れて』事件の底に流れている真相とは (ミス・マープル)
『NかMか』トミーとタペンスシリーズ二作目 スパイは誰?(トミーとタペンス)
『ゼロ時間へ』0時間へと向かってその到達点とは (ノンシリーズーバトル)
『ねじれた家』その家にはどんな真実が隠されていたのか(ノンシリーズ)
『終わりなき夜に生れつく』全編に流れる悲しい調べ (ノンシリーズ)
番外編 『春にして君を離れ』ミステリーではないけれど (メアリ・ウエストマッコト)
『カーテン』最後の事件 (ポアロ)
悩みながらの10選です。 他にも面白い作品や魅力的な作品はありますが、ここでは、だれが読んでも面白い、また評価も高い作品をピックアップしてあります。 どれも読みやすい作品です。 ただ『NかMか』は、トミーとタペンスのシリーズなので、できれば、『秘密機関』か、短編集『おしどり探偵』を読んでから、手に取って貰いたいです。 もちろんそのまま読んでも、十分話はつながります。
楽しんでいただければと思います。
この他にも魅力的な作品が沢山あります。 気の向いた方は、ぜひ他の作品にもチャレンジしてみてください。
クラリサベスト10プラス 詳しくはこちら クラリサベスト10
ポアロシリーズ
ポアロとは、アガサ・クリスティーが生み出した名探偵
身長5フィート4インチ(約163センチメートル)堂々とした身体に、卵型の頭が乗っており 小鳥のように首をかしげ、軍人風のご自慢のおおきな口髭を、ピンと跳ね上がらせています。 灰色の脳細胞で事件を解決に導きます。 ベルギー生まれで退職しているが、優秀な刑事。 装いの潔癖さは、ちょっと引くほど。ホコリ一つでもつこうものなら、大騒ぎ。 そんなポアロが何故、イギリスに来ることになったのかも、『スタイルズ荘の怪事件』に書かれています。 良き相棒として活躍する、ヘイスティングズ大尉との出会いも描かれています。
ヘイスティングズ大尉が気に入った方は、続けて『ゴルフ場の殺人』を読むのもいいと思います。
ポアロを読んでみたいと思った方には、『スタイルズ荘の怪事件』を読んだ後に短編集『ポアロ登場』を読むのもあり。 ポアロとヘイスティングズ大尉の活躍が楽しいです。 ただこれは、完全にシャーロック・ホームズへのオマージュ。 アガサ・クリスティーがいかにシャーロック・ホームズに影響を受け、好きだったかがわかります。
『アクロイド殺し』を読む前に短編集『ヘラクレスの冒険』を読めば、『アクロイド殺し』にポアロが登場したとき、なぜ、カボチャをつくっているのか?(笑) 話がつながります。 『ヘラクレスの冒険』は評価が高いです。
ついでに、お気に入りの短編集を紹介すると『クリスマス・プディングの謎』です。 クリスマスの時期のカントリーハウスが舞台となっていて、英国伝統のクリスマスの様子などが描かれた、楽しい作品も含まれています。
短編集は、久しぶりに本を読む方にとって読みやすいのではないかと思います。
ポアロシリーズで、有名作品4選のポアロもの『オリエント急行の殺人』『アクロイド殺し』『ナイルに死す』他に、特に評価が高い作品は、クラリサおすすめ10選にも入っている、『ABC殺人事件』『白昼の悪魔』『五匹の子豚』などがあります。
これらの作品ほど有名ではないですが、『もの言えぬ証人』『死との約束』『杉の柩』『ホロー荘の殺人』『マギンティ夫人は死んだ』『葬儀を終えて』『像は忘れない』など、面白い作品がまだまだあります。
『カーテン』はポアロ最後の作品で、こちらも傑作名高いです。 最後の作品にふさわしい内容になっているので、できればポアロものをある程度読んでから、読まれるのをお勧めします。 最初の作品の舞台、スタイルズ荘でポアロが最後に挑む事件がおこります。
ミス・マープルシリーズ
ポアロはあまり好きではない、という方には、ミス・マープルはどうでしょう。
ミス・マープルとは、ポアロと人気を二分する、こちらは素人探偵
ピンク色のほほをした、編み物と園芸を趣味とする、いかにも優し気な高齢の女性。 セント・メアリ・ミード村に長年住み、その観察眼と、直観力で難事件を解決していきます。
ミス・マープル短編集の『火曜クラブ』長編『牧師館の殺人』『書斎の死体』などはどうでしょう。 じつは、出版は『牧師館の殺人』が先ですが、ミス・マープルのお目見えは雑誌に掲載されていた関係で、その後短編集にまとめられた『火曜クラブ』のほうが先。 なのでミス・マープルの雰囲気が2冊で違います。 後の『牧師館の殺人』のミス・マープルは、『火曜クラブ』のミス・マープルより若々しいです。
ミス・マープルは長編は12冊しかありません。 ポアロは33冊あります。 (両方ともハヤカワ文庫参照) ポアロにくらべて、圧倒的に数は少なく、しかも作品によっては、登場場面が少ない作品もあります。それでも、ミス・マープルはポアロと肩を並べ、アガサ・クリスティーが生み出した名探偵として堂々と多くのファンの心をつかんでいます。
クラリサおすすめ10選『動く指』『ポケットにライ麦を』『鏡は横にひび割れて』の他にも『予告殺人』『パンディントン発4時50分』『カリブ海の秘密』『復讐の女神』などがあります。 ほぼ全ての作品くらいになってしまいました。
ミス・マープルの作品の中で『バートラム・ホテルにて』という作品もありますが、この作品はどちらかというと、その導入部分のホテルの様子、古き良き時代を思わせる描写に人気があります。
ノンシリーズ
『そして誰もいなくなった』を読み、ポアロやミス・マープルといった探偵の出ないノンシリーズが気になった方にはこちら
アガサ・クリスティーの代名詞ともなっている『そして誰もいなくなった』はノンシリーズの代表作です。 ノンシリーズと言えば、ポアロやミス・マープルという有名な二人の探偵が登場しません。”いつもの探偵”その縛りから解放された、アガサ・クリスティーは、独創的な感性をフルにいかして、何作もの素晴らしい作品を生み出しています。
『そして誰もいなくなった』の他に、クラリサおすすめ10選から『ゼロ時間へ』とか、『ねじれた家』『終わりなき夜に生れつく』など傑作があります。 『忘られぬ死』『無実はさいなむ』も面白いと思います。
暗いのはちょっと苦手な人には、明るい冒険ミステリーをお勧めします。 『茶色い服の男』『七つの時計』あるいは『なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか』で”明るく元気なおきゃんな女の子”に出会うことができます。
ここで個人的見解を述べさせて頂くと、この”おきゃんな女の子たち”がとても魅力的です。(この”おきゃんな女の子”は世間一般の共通認識でしょうか?『アガサ・クリスティー完全攻略』霜月蒼著から、とらせていただいています。なぜならこの女の子たちをこれ以上端的に表している言葉が見つからないからです。)
トミーとタペンスシリーズのタペンスが”おきゃんな女の子”の代表です。 こんな作品と登場人物がいることで、ますます、アガサ・クリスティーの世界にのめり込んでいったような気がします。 めちゃキュートなのです。
また、ノンシリーズには、アガサ・クリスティーの自伝や、二番目の夫、マックス・マローワンと発掘調査に行った時の様子を著した『さあ、あなたの暮らしぶりを話して』や詩集『ベツレヘムの星』なども含まれています。
メアリ・ウェストマコットシリーズ
ミステリーはどうも苦手という方には、アガサ・クリスティーが別のペンネーム、メアリ・ウエストマコットの名前で書いたクラリサベスト10にも入っている『春にして君を離れ』または
『愛の重さ』などはどうでしょう? アガサ・クリスティーは、この別のペンネームをつかって、ミステリーでは描き切ることができない、人々の内面に、深く入り込もうとしていました。 それゆえ、アガサが書いていると、ばれてしまったときは、激怒したそうです。
こちらはミステリーではありません。 ロマンス小説だと言われているが、甘くはない。 むしろ、重い雰囲気です。
全作品で6冊です。
ハヤカワ文庫ではアガサ・クリスティーの名でノンシリーズとして一緒に出版されているので、注意が必要です。
『春にして君を離れ』は、旅行中ひょんなことから、自分の人生を振り返ることになり、自分を見つめなおすことになる主人公を描いています。 『愛の重さ』は題名どうり愛すること、愛されることの愛の重さを、描いています。 ただこれは男女の愛ではなく、姉と妹の関係です。 『娘は娘』は母親と娘との関係を描いています。
アガサ・クリスティーの自伝的作品『愛の旋律』『未完の肖像』も含まれています。 アガサ・クリスティーとして『自伝』も書いていますが、この2作品は、半生を知るうえで興味深い作品になっています。 また、根本にキリスト教的な救済がテーマとなっている『暗い抱擁』という作品もあります。 アガサは、敬虔なキリスト教徒でした。
トミーとタペンスシリーズ
トミーとタペンス とは 力を合わせて事件に挑む名コンビ
看護婦をしていたタペンスと、戦争から帰ってきたトミー、ともに仕事にあぶれ困っていたときに偶然再会した、幼馴染の二人。 そこから二人の冒険ミステリーがはじまります。
大好きな二人を紹介できてうれしいです。 元気一杯のタペンス、優しく落ち着いたトミーと、二人が協力し合いながら、事件に体当たりしていきます。
『秘密機関』で若々しいふたりが出会い、協力しながら事件を解決します。 そしてともに年齢をかさね、『NかMか』『親指のうずき』で大活躍し、老境に入り二人の最後の作品『運命の裏木戸』まで元気に活躍します。 長編4作、短編集1作品しかありませんが、二人が味わい深く、心惹かれるシリーズです。 ポアロやミス・マープルとちがって、本格的に謎を解くというよりは、冒険ミステリーという感じです。 いつも元気な二人だけれども、年齢を重ねるとともに思慮深くなっていきます。 なので、話の展開も元気に動き回る『秘密機関』から『NかMか』は趣がかわっています。 読み進めるうちにこの二人を大好きになってしまう方もいるでしょう。 魅力あふれる二人なのです。
代表作は『NかMか』 クラリサベスト10にも入っています。 この作品をいきなり読む前に、『秘密機関』か短編集『おしどり探偵』を読んでトミーとタペンスと知り合ってから、名作と言われる『NかMか』を読んでほしいです。
まとめ
今回の記事は、主に長編を中心に概略だけお伝えする形になってます。 まだまだアガサ・クリスティーの魅力を伝えきれていません。 例えば、短編集にしか出てこないパーカー・パイン氏やハーリ・クイン、優れた戯曲も紹介できていません。
これから順次紹介させていただきます。
最後にもう一言アガサ・クリスティーの魅力を述べさせてもらうと、読後感が爽やかな作品が多いことです。 顕著な例は『青列車の秘密』 作品自体は、それほど知られている作品ではないです。 これは、アガサ・クリスティーが、私的なことで悩み落ち込んでいるときの作品です。 人生がとてもつらく、そんな時に作品を書きあげなければならない状況に、「はじめてプロとしての厳しさを知った。」(自伝より)と述べています。 書いていた当時の思いが蘇るのか、アガサ・クリスティーはこの作品をひどい作品で読む気もしないとも語っています。 しかし、そんな状況の時でも、作品の最後に人生を列車に例えて”希望を運んでくる”と、前向きにしめくくっています。 アガサ・クリスティーが自身に宛てた励ましともとれ、読者にとっても、人生の応援メッセージになっています。 この『青列車の秘密』のようにたとえ評価は高くなくても、良い作品だなと思うものは沢山あります。
読後感が爽やかで軽やかであることは、文学作品や芸術的作品に必ずしも求められることではないですし、暗く重いテーマで人生や人間について問い、考えさせられるもののほうが多いでしょうか。 そんな読書の合間に、アガサ・クリスティーの、この軽やかで、爽やかな読後感をもたらしてくれる作品を読んでみてもいいかな、と感じています。
また、努力が必ず報われるとは限らず、善が必ず悪に勝つとも言い切れず、すっきりと、割り切れないであろう人生において、単純明解、勧善懲悪、そんな世界をたまには、疑似体験するのもいいかもしれないです。。
これからも、その魅力を作品とともにお伝えしていきたいと思います。
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