ミス・マープルは、ポアロと並んで、アガサ・クリスティーが生み出した名探偵です。ポアロと対照的な設定になっています。その作品数はポアロに比べて3分の1ほどですが、ポアロよりミス・マープルのほうが好きな方もいて、人気を二分しています。長編は12作品ありますが、5選を紹介しながら、その魅力に迫りたいと思います。
ミス・マープルとはどんな探偵?
ミス・マープルとはどんな探偵? **老婦人、正義の人、変身⁈**
ポアロは、元警察官で職業探偵でベルギーの人です。ミス・マープルは、セント・メアリ・ミード村に住む独身の老婦人でイギリス人です。共に年齢が高いことをのぞけば、対照的な二人です。
そんなミス・マープルとポアロの共通点はともに老齢なことですが、あんなにポアロを若く設定すればよかったと悔やんだアガサだったのに、ミス・マープルも老婦人です。共に経験から培われた知識を必要とするなど、年齢が高くないと描けなかった部分もあるでしょう。特にミス・マープルの事件を解決するために必要とされるのが、経験と経験からくる直観です。
ミス・マープルの原動力は強い正義感です。それ故、最終形態として変貌します。それは、ミス・マープルを読んでいくとわかります。
ミス・マープルおすすめ5選
ミス・マープルの長編は12作品しかないのですが、それにもかかわらず、その中から5選はかなり厳しいです。悩みながら選びました。
1『書斎の死体』1942年 **古き英国の姿がまだ存在**
ミス・マープルと短編集『火曜クラブ』でお馴染みのバントリー夫妻が登場します。朝のシーンバントリー夫人のユーモア溢れる夢から始まるこの作品は、ミステリーとしても素晴らしいのですが、英国の様々な生活などが垣間見れるところも面白いです。ミス・マープルの推理もさえわたっています。
2『動く指』1942年 **ロマンスを添えて**
ミス・マープルの出番は少ないですが、ちょぴりロマンスの香り付けが楽しい作品です。セント・メアリ・ミード村ではないのだけれど、同じようなイギリスの小さな村で、悪意ある匿名の手紙をめぐって事件が起こります。その村の様子や交流なども知れて面白い作品です。アガサもお気に入りの作品です。
3『ポケットにライ麦を』1953年 **ミス・マープルの最高傑作**
ミス・マープルのシリーズの中で最高傑作と言われている作品です。ミス・マープル自ら、事件解決のために動きます。その胸の内にあるのは、怒りです。マザーグースの「6ペンスの詩」に合わせて犯罪を繰り返す犯人に対して、強い怒りで対峙します。ラストには、深い感動も。忘れがたい作品になるでしょう。
4『鏡は横にひび割れて』1962年 **何層にも重なった悲しみ**
華やかな世界にいながら、その心の底には悲しみの川が流れているそんな登場人物を、見事に描がいています。お馴染みのバントリー夫人も登場するなど脇を支えられながら、ミス・マープルが鮮やかに事件の謎に迫ります。セント・メアリ・ミード村の変化なども書かれており、時代の流れを感じさせられる物語となっています。移り変わっていく村の様子も重なって、より奥深い作品に感じられるのかもしれません。
5『カリブ海の秘密』1964年 **ミス・マープルの変貌**
セント・メアリ・ミード村を飛び出したミス・マープルが旅先で事件を解決します。ここでミス・マープルは自ら変貌します。大富豪で身体の不自由な頑固な老人と、何かふわふあしているものをあんでいる老婦人ミス・マープルの二人が、協力し合ってどのように事件を解決していくかが、読みどころとなっています。
一言紹介したい作品たち 3選
5選にはもれましたが、どうしても一言、紹介したい作品たちがあります。
1『予告殺人』1950年 **出だしの秀逸さ**
読者の心を掴んで離さない書き出しは何作もありますが、これもその書き出しから有名な作品。ベスト10に選ばれることも多く、有名でファンの多い作品です。
2『パディントン発4時50分』1957年 **ルーシー・アイルズバロウの魅力**
魅力的な女性を描くことがうまいアガサ・クリスティーですが、この女性もその一人。作中の男性陣を、ゾッコンにさせてしまいますが、読んでいるこちらもその魅力にはまってしまいます。
3『バートラム・ホテルにて』**これぞ英国**
アガサ・クリスティーの作品で、結構紹介されることが多いものです。内容というよりも、その舞台となるバートラム・ホテルの様子が古き良き英国を思わせ、心ときめかずにはいられません。舞台となったホテルはロンドンに候補が2つあり、そのどちらも、アガサ・クリスティーのファンが訪れているようです。
ポアロとミス・マープル
ポアロとミス・マープルの出会いを求めるファンは多かったのですが、アガサは作品のなかで二人を合わせることはありませんでした。けれども、二人の交友関係を調べると、知人を通じて、うっすらと繋がっていて、もしかしたら互いに存在は知っていたかもしれないと、楽しい想像ができます。
実際の世界では、アガサ・クリスティー生誕100周年の記念イベントで、ポアロ役のデビット・スーシェと、ミス・マープル役のジョーン・ヒクソンが、オリエント急行に乗ってトーキーの駅で出会っています。ファンとしては、たまらないですよね。行ってみたかったなあ。
まとめ
ミス・マープルは、ポアロほど作品数も多くなく、一見地味な存在ですが、実は、アガサ・クリスティーの人気を支える大きな存在です。ポアロでは描き切れなかった、英国社会の魅力を私たちに教えてくれます。そして、作品の中でミス・マープルが正義のヒロインとして、大きく変わっていくところも、読みどころの一つとなっています。是非、皆さんも手に取って、ミス・マープルの世界に浸ってみてください。

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