”エジプト”に魅せられ、その地を旅をしたいと思うのはいつの時代でも変わらないようです。アガサ・クリスティーもエジプトに魅せられ、エジプトを舞台とした作品を描いています。有名な『ナイルに死す』を含めて、長編2作品、短編3作品、戯曲1作品あります。エジプトを描いた作品から、その作品の魅力を探ってみたいと思います。
アガサ・クリスティーとエジプトの最初の出会い
アガサ・クリスティーとエジプトとの直接の関係は、1908年のエジプトでの社交界デビューから始まります。父フレデリックを亡くしたミラー家は、財政的に困窮状態にありました。母クララの発案で、イギリスで娘を社交界デビューさせるよりも安くすむし、また自身の健康もすぐれないので、転地療養も兼ねることができると3ヶ月ほどエジプトに滞在しています。当時アガサは、エジプトの遺跡などあまり興味がなく、50回以上ダンスパーティーに出かけ、競馬やポロ、ピクニックにと、多くの若い軍人と出会いを通じて、交友関係を広げたそうです。その後、何十年か後に、再びアガサの前に現れたエジプトは、素晴らしく、強烈な印象をもってアガサを魅了します。若かく興味が無いときに遺跡見物など”母に連れて行かれなくてよかった”と『自伝』で述懐しています。
エジプトに魅せられて
再びアガサがエジプトにふれるのは、1922年に、ツタンカーメンの墓がハワード・カーターによって発見され、世紀の大発見と言われたことです。また、その支援者のカーナヴォン卿が亡くなったためツタンカーメンの呪いかと世間で騒ぎがおきました。アガサも興味を持ったようです。
次にアガサがエジプトに出会ったのは、1933年12月に、2度目の夫マックスと娘ロザリンドとのナイルクルーズの旅でした。アガサの『自伝』に「ルクソールやカルナック、エジプトの美は、すばらしい衝撃としてわたしの前に現れた」と書かれています。その年1933年「ナイル河の殺人」(パーカー・パイン)を発表し、1935年「船上の怪事件」を発表しています。そして、1937年ナイルクルーズの最中事件がおこる有名な『ナイルに死す』が発刊されました。
作品紹介
作品を紹介したいと思います。
1『ナイルに死す』1937年(ポアロ) **壮大なエジプトに似合う壮大な物語**
有名な作品なのでご存じの方も多いと思います。映画化もされています。かなり厚い長編でちょっと手にするのは勇気がいりそうです。しかも半分くらいでようやく事件が起こります。けれどもその面白さは格別で、ナイルの静かなさざめきや、神秘的な神殿が目の前に浮かび上がってきて、時の経つのも忘れてしまうほどです。アガサの沢山の作品のなかでも格上の存在。しかも”ページをめくるのももどかしい”そんな作品です。
詳しくはこちらアガサ・クリスティーの超有名作品4選
2『死が最後にやってくる』1944年(ノンシリーズ)**感想が・・・**
アガサ・クリスティーの知人で、エジプトを研究しているスティーヴン・グランヴィル氏の助言を受けながら、紀元前2000年のエジプトを舞台にしたミステリーをえがきました。舞台もエジプトですし、登場人物もそれなりにですが、読み終えた後のもやもやが、私にはありました。好みの分かれる作品かな?
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3 短編集『ポアロ登場』「エジプト墳墓の謎」1924年(発表1923年「ザ・スケッチ」)
1922年の”ツタンカーメンの墓”の世紀の大発見ととその後のカーナヴォン卿の突然の死に触発されて書いた作品です。まさに発掘隊に呪いがかかっているのではないか?との依頼を受けポアロが解決にのりだします。暑いエジプトに閉口するポアロの姿がユニークです。砂漠でもポアロのポリシーは揺るがない!いやいや、砂漠だし。
4 短編集『パーカー・パイン登場』「ナイル河の殺人」1934年(発表1933年「ナッシュ・ペル・エル・マガジン」)
ポアロでもミス・マープルでもなく異色の探偵(探偵と言っていいのかな?)お悩み相談者パーカー・パインの登場です。なかなか見事な探偵ぶりです。事件解決に奮闘します。
5 短編集『黄色いアイリス』「船上の怪事件」1935年(発表1935年「ザ・スケッチ」)
船旅で起こった事件の謎に迫るポアロ。ここで小さなミステリーが。なんとポアロはある登場人物に”エジプトは初めてか”と聞かれ、初めてだと答えています。どう考えてもヘイスティングズ大尉と「エジプト墳墓の謎」を解きに出かけた方が先で、エジプトは2回目じゃない?と思うのですが?・・・
6 戯曲『アクナーテン』1973年**アガサ・クリスティーのロマンチックが弾ける**
エジプトで唯一、一神教を広めようとしたファラオ「アクナーテン」(アメンホテプ4世)を描いた作品です。アガサ自身はお気に入りでしたが、劇として上演するのは、莫大な費用がかかり過ぎると言われて、今だに上演されたことがありません。費用の面だけでなく、この作品がミステリーの女王アガサの作品として、大衆に受け入れられるか、また面白いと思ってもらえるかの判断もあったのではないでしょうか?
作品自体はかなり好き嫌いが分かれる作品だと思います。途中で嫌になっちゃうか、”なかなか面白いじゃん”になるかは、やはりその人の好みしだいですかね。エジプトを舞台として戯曲を書いてみたいというアガサ・クリスティーの思いが溢れちゃってる作品です。
長編『ナイルに死す』と『死が最後にやってくる』の読み比べ
もちろん軍配は『ナイルに死す』にあがります。同じエジプトを描いていてこうも違うのか?というくらい違います。壮大なスケール感、肌に感じるエジプトの風と薫り。登場人物たちのいきいきとした動きと描写。『ナイルに死す』は前述したとうり、実際にアガサ・クリスティーがナイル河を旅をしたこと、その経験がいきています。『死が最後にやってくる』は、書いてみたらどう?と勧められ助言を受けながら書いたものです。いくら想像力の豊かなアガサでも、やはりエジプトの人々の暮らしや、そこで起きる事件を魅力的に描くことは難しかったのでしょうか?『ナイルに死す』に比べて今一つ、なにかパンチにかけたものになってしまっているような気がします。皆さんは、どう思われるでしょう?
まとめ
『ナイルに死す』以外の作品はそれほど有名でもなく、評価が高いわけでもありません。アガサの思いが強すぎたのでしょうか?それでも十分これらの作品を読むと内から外からとエジプトという世界を想像することができます。また、作品のなかに見られる大英帝国の面影、当時のイギリスとエジプトとの関係もみえてきます。アガサ・クリスティーの作品は、いろいろな広がりを持って私たちの前に存在し続けるようです。

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